今庄青果(仙台市青葉区) 野菜が繋ぐ 恩返しの心 B班 仙台大学 佐藤真一朗

 洗練された都会の街並みから一歩入ると、雑然とした市場の風情に包まれる。

 仙台市青葉区中央、JR仙台駅前にある「仙台朝市」。青々した野菜、つやのある鮮魚が並ぶ「市民の台所」は約70店舗が軒を連ねる。その一角に店を構えて61年の「今庄青果」は、地元産の野菜や果物を中心に約300種類をそろえる。

 仕入れの責任者は、この道26年のベテラン高橋正洋さん(53)だ。「代表取締役主幹」の肩書を持つ。毎日、若林区卸町の市中央卸売市場に足を運び、店に並べる野菜や果物の鮮度を直接、自分の目で確かめる。大切にするのは地元の仙台産、次に宮城県産。手に取ったお客が「新鮮だ」と喜ぶ姿を思い浮かべる。

 店に立てば「青果のプロ」として、どんな質問にも答える。「昨年買ったあの野菜、今年はどう?」。常連ではないお客の尋ねにも、脳内コンピューターを高速回転させて記憶を呼び起こす。「話の引き出しをたくさん持てたことは自分にとって財産だよね」。野菜の売り買いだけでなく、レジ越しの会話やつながりを大切にする姿勢で厚い信頼を得ている。

 青果店で働くことは、実は自らが選んだ道ではなかった。当初は飲食店を営む父の後を継ぐつもりだったが、「違う世界も知らないと、人の気持ちが分かるようにならない」と勧められ、父の知り合いだった庄子泰雄さん(81)が社長を務める今庄青果の門をたたいた。

 「野菜は値段が安ければ売れる」。働き始めた頃は、薄利多売こそが商売の基本だと思っていた。勘違いを改めてくれたのは庄子社長の教え。「お客を笑顔にすることが、商売人にとって一番大事だ」と諭された。単に「モノ」を売るのではなく、売り手の「言葉」によって付加価値を買ってもらうという意味。お客と向き合う高橋さんの原点になった。

 庄子社長と同い年の父は、7年前に他界した。人として大きく育ててくれた父と、働く意義をたたき込んでくれたもう一人の父。「二人のおやじを追い越すことが最大の恩返しかもしれないな」と高橋さんは笑顔の奥で静かに精進を誓う

仕入れた人参を店頭に並べる準備をする高橋さん。

河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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