布久満(仙台市太白区) 永く、想いつなぐ着物 同志社大3年 平目一輝


 谷政子さん(65)は通勤時ですら、着物の上にもんぺを、自転車をこぐ。普段着としての着物をこよなく愛している所以だ。

 仙台市太白区の着物店「布久満」を営む。「布を幾久しく、満足して着てほしい」と思いを込め、1990年に開業した。着物を販売するほか、シミ抜きや染め直しなど顧客と専門業者の仲介をする。「他のお店では、諦めそうな着物も請け負うことはできる」と語る。

 「売ることはもちろん、まずは着物を知ってもらいたい」週に2回、店で着付け教室を開き、着物文化の継承に力を入れる。接客の際も、初めての来客問わず、着物のことについて丹念に話す。

 着物は、一枚の布を身体の寸法に合わせて裁断し、縫い合わせることで仕立てられる。糸を解くと、再び着ることができるため、幼少期から祖母の着物を着て育った。「世代を超えて着ることができる」と着物の形に魅了された。

 東日本大震災から1ヶ月半後、石巻市の顧客から20枚を超える着物を頼まれた。祖母、母親、娘と三世代に受け継がれた着物だが、津波で泥まみれになり、再び袖を通すには困難な状態だった。仕立て直すよりも、新たに購入する方が安い。「それでも、思い入れが強いからこそ、仕立て直してほしい」思いを把握し、依頼を受けた。

 震災により着物を簡単に捨てる人がいる中、「『着物を大切にする人』が目に見えて現われ始めた。着物を残したい思いは震災を契機にさらに強くなった」。と着物店の変わらぬ使命を胸に込める。

 来店した人に合わせた着物の色を選び、着付け後、笑顔を見る瞬間が幸せを感じる。「着物を着た人の笑顔を見ると、まだまだ伝統の魅力は伝わるのだ」と勇気付けられる。

 永く大切に扱っているからこそ、通勤時も着物を身にまとう。顧客から譲り受けた着物を仕立て直した、もんぺ。世代を超え、時を超え、思いを背負う。魅力を広めるため、今日もまた、自転車をこいで「布久満」に走り出す。

着物の生地に手を添える政子さん。

着物にご自身の思いをのせる。

河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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