【A班原稿】岩井畳商工店(仙台市太白区)/編み目の温かみ 小物に
東京外国語大3年 飯岡真凜
東北学院大2年 神室理穂
上智大2年 津田真由子
明治大2年 千葉茂樹
指でなぞると、波打つ畳の編み目。千代紙をまとった畳のコースターが並ぶ。若草、ピンク、やまぶき色の品々が色鮮やかに輝く。
仙台市太白区長町南に店を構える創業90年の老舗「岩井畳商工店」。3代目の岩井武宏さん(57)は、この道37年の畳職人だ。畳の新調や張り替えに精魂を込めてきた。
本業で磨いた腕を生かし、わずかな時間を見つけては、畳を使った小物作りに挑戦してきた。毎月8日、陸奥国分寺薬師堂(若林区)で開かれる「手づくり市」に出店している。
畳職人を目指していた10代の頃、畳技術の粋を集めた作品を博覧会で見て、畳の奥深さに引き込まれた。
「作ってみたい」
本を頼りに見よう見まねでさまざまな畳小物を作った。サイコロ、枕、サッカーボール…。作り上げた達成感が、次の作品への原動力になった。
畳の現状は厳しい。一家だんらんに欠かせないものだったが、フローリングの普及により需要は落ち込んでいる。
年々減る仕事。東日本大震災を機に辞めていく同業者たち。そんな中、息子の勇人(はやと)さん(28)が店を継いでくれた。「やっぱりうれしいですよね」と笑みをこぼす。
店の将来を真剣に考え始めたときに誘われたのが、手づくり市だった。
「魅力を知ってもらうことが、畳を残すことにつながる。少しでも自分にできることをしたい」。趣味で作る畳小物の販売に乗りだした。
手づくり市に来た人がうれしそうに小物を手にする姿を目にする。「今度これを作ってほしい!」という期待の声を聞く。市での触れ合いが、創作意欲をかきたてる。
「次は大きい魚のオブジェを作りたいんだよね」
郷愁を誘う畳の香りが漂う工房で、今日も岩井さんは小物を通して人と畳の出合いを織り上げる。
工房で畳コースター作りに打ち込む岩井さん
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