夢を求めて  東北学院大・保坂一眞

 普段私たちが何気なく見かける自動券売機。自動券売機を制作、レンタルしているのが仙台市泉区南中山にある有限会社「パルコ」だ。現在、仙台での券売機のシェア率は40パーセントを占めている。この数字は宮城県でトップであり、東京、名古屋にもシェアを広げている。

 

 競争の激しい業界を生き抜くために、社長の阿部章さん(34)が昨年始めたのが「100個の夢」の試みだ。月1回、「夢会議」と呼ぶ場を開き、そこで語られた社員の願いを経営に取り入れている。この取り組みが「会社にも取引先にも、プラスになっている」と言う。

 

 その夢を共有し、応援し合うために夢会議を開いている。「その夢の中から新たな事業を立ち上げる。もしくは夢の中からつながりを見つけていきたい」と今後の目標を語ってくれた。







夢について熱心に語る阿部さん。8月27日仙台市泉区

 

 券売機本体に子供向けのイラストを描く。これはデザイン担当の猪狩悠介さん(21)の夢から始まった新しい事業だ。「大好きなイラストを仕事にしたい」という猪狩さんの夢は、市内にあるレストランに置かれた1台の券売機で形となった。何も書いていない殺風景な外観から、かわいらしい雰囲気に変えてほしいという発注者の依頼。これをきっかけに、券売機の外観コーディネートは、「ラッピング券売機」の名前で事業の柱の一つになった。



 「これからも、社員みんなの夢を実現する手助けができればいいな。その先に企業の成長もある」。阿部さんは豪快に笑う。



 便利商品を扱っているため、震災の影響はあまり受けなかった。しかし地域に携わる中小企業として何か役に立ちたいと思い、宮城県中小企業家同友会の一員として物資を運んだそうだ。そこで働くことの大切さを痛感できたそうだ。「働くという字は人が動くと書きます。これからも人と社会の役に立ちたい」と阿部さんは語ってくれた。

 

 夢を大切にする阿部さん自身の夢は何か─。

「先代である父から受け継いだこの会社を全国規模にしたい」

 夢に向かってパルコは進んでいく。


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。