お腹と心が満たされる瞬間がそこにある   日本大・井上健人

モチモチとした玄米ご飯、具だくさんのお味噌汁、肉汁したたるポークソテー。付け合わせの小鉢も種類豊富。食べ応えもあり、日常に不足しがちな栄養素を丸ごと摂れる。



自慢の日替わりランチ、値段は650円とお手頃だ。こだわりは料理だけではない。風景画に囲まれた店内は、美術展に踏み入れたような雰囲気を漂わせる。



カフェ&アートレストラン「オリーブの風」は、仙台市宮城野区榴ヶ岡「みやぎNPOプラザ」の1階にひっそりとたたずむ。2011年5月にオープンして以来、昼時になるとスーツ姿のサラリーマン、子ども連れの主婦で賑わう。



「オリーブの風」にほぼ毎日足繁く通う男性がいる。NPO法人「シャロームの会」理事長を務める菊地茂(57)さんだ。「シャロームの会」は、精神障がい者の社会的自立を支えている。「オリーブの風」を含めた3つのカフェやお惣菜店を運営している。



「シャロームの会」では精神障がい者を「チャレンジド」と呼ぶ。「神様から挑戦すべきことを与えられた人」を意味し、博愛の気持ちで接する。今年で活動は10年目を迎えた。







接客を担当するチャレンジドのユウキさん=仙台市宮城野区榴ヶ岡、カフェ&アートレストラン「オリーブの風」





これまでに数多くのチャレンジドを実社会に送り出した。「オリーブの風」はチャレンジドの就労訓練の場という一面も兼ね備えている。



「精神障がいは『関係の病』」と菊地さんは語る。自分が好きになれず、自分を表現することもままならない。人とのコミュニケーションが少しばかり苦手なのだ。精神障がいは、知的障がい、身体障がいとは異なる。



目に見えないケースもあり、世間からの認知度が低い傾向にある。「オーダー、配膳、レジといった自然とコミュニケーションが生まれる環境がここにはある」。菊地さんはチャレンジドの成長と世間からの理解に期待を込めた。



「チャレンジドが一生懸命に働く姿を見るとなぜか元気が湧いてくる」。40代前半の男性会社員は週に一度必ず訪れるらしい。キーマカレーをおいしそうに頬張り、足早に仕事場へ戻った。



「オリーブの風」は、おいしい料理を提供するだけではない。ひたむきに働くチャレンジドが大切なことを教えてくれる場所なのかもしれない。


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。