思い籠もった七夕 生で感じて   東北大3年 後藤武尊

和紙の滑らかな触り心地と色鮮やかな模様。


虹をイメージして配色された飾りは、見る角度によって多彩な表情を覗かせる。


「七夕の魅力は直接見てみないと分からないんです」


そう言い切るのは、鳴海屋紙商事(仙台市若林区卸町)の山村蘭子さん(82)。


 


 



七夕制作に励む山村蘭子さん=仙台市若林区卸町の鳴海屋紙商事本社


 


 


七夕飾りを30年以上も作り続けてきた職人だ。


飾りのデザインから他の職人の指導、製作までこなす。


 


作業場では今夏に東京で展示される七夕飾りの制作が進行中だ。


直径90㌢の球体の竹細工にピンク、黄色、水色など色とりどりの紙花を約800個取り付けていく。


フットサルコート1面分ほどの広さの作業場で、山村さんを中心に10人の職人が作業を行う。


繁忙期には工場を増やし、100人以上が総出で仙台七夕まつりで展示される飾りの3分の2、約1500本の制作に取り組む。


作業量が多いため、準備は冬から始まる。      


 


東日本大震災では社屋が大きく壊れ、紙の裁断機も故障した。


仙台七夕まつりは開催が危ぶまれた。


山村さんを突き動かしたのは、「七夕を絶やす訳にはいかない」という使命感だ。


震災発生から2週間後、青葉区一番町の作業場で制作を再開した。


「七夕まつりを盛り上げたい」と制作を依頼する企業が増えた。


七夕には全国各地から届いたたくさんの折鶴や短冊を飾った。


山村さんは「作業は大変でしたけど、人々の復興への願いが込められていて、本当に美しかった。


七夕飾りは生きています。


作り手の思いに応えて美しくなるんです」と語る。


 


震災発生から4回目となる今年の七夕まつりは「復興へと前進する仙台」を表したいと山村さんは考えている。


過去3回は犠牲者への鎮魂や被災者への配慮から派手さを抑えていたが、今回は金色や銀色も使って明るい色合いの七夕飾りを復活させる予定だ。


「七夕まつりは、商店街に活気が満ち溢れるものにしたい。


被災地で苦しむ方も飾りを見て、元気を出してもらえたらうれしい」


 


山村さんは今日も制作に打ち込む。


復興へと前進する決意を込めた七夕飾りが仙台の空に美しく舞う姿に思いを馳せて。


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。