非行少年への理解、広めて    東北学院大3年 鎌田尭

 


NPO法人「ロージーベル」。


少年の更生を助ける指導をし、生活習慣の確立、就労支援をする団体だ。


理事長の大沼えり子さん(57)=ペンネーム=は保護司としても活躍している。


保護司とは法務大臣から委嘱を受けた非常勤の国家公務員だ。


給与は支給されない。


主に少年の更生保護と社会復帰を助ける。


同法人の事務所は仙台市青葉区のアネスティ法律事務所内に置かれている。


弁護士で副理事長の勝田亮(まこと)さん(45)は法律事務所の代表を務める。


 



大沼えり子さん(左)と勝田亮さん(右)


 


 


2008年に勝田さんと大沼さんが設立。


始まりは勝田さんと大沼さんの「帰る家のない少年の居場所をつくりたい」という思いの一致からだった。


2011年1月「少年の家(ロージーハウス)」を開設した。


同施設では少年院や鑑別所を出た後、引き取り手がない少年を受け入れている。


少年が就労してお金を貯め、住む場所を見つけるまで支援する。


非行をした少年の多くは親から愛情を受けていない。


中には「生まれてこなければよかったのに」と我が子に話す親、暴力を振るう親もいる。


 


同施設では家族の温かみを知ることができる。


大沼さんは母(ロージー)として少年たちに愛情を注ぐ。


少年たちが「愛」を受けることは社会復帰の手助けにつながる。


「非行をした少年の多くは本当の家族を知らないから、家族をつくれない」と大沼さん。


幸せな家庭生活を教えることで「虐待の連鎖」を断ち切ることができる。


「家族とご飯を食べ、お風呂に入る」当たり前のことが少年たちにとっては幸福だ。


同施設はいつも笑顔で溢れている。


 


ロージーハウスの設立は前途多難であった。


施設の開設を予定している地域の住民3割が設立に反対。


説明会の開催や、地域住民の家を一軒ずつ説明して回り開設に漕ぎ着けた。


 


だが、非行をした少年への世間の風当たりはまだまだ強い。


大沼さんは地域住民の理解を得るため、地域の人に会ったら大きな挨拶をすること、施設周辺の清掃活動に取り組むことを少年たちと約束した。


1年半後、大沼さんと約束を守った少年たちの取組みによって、表立って反対する人がいなくなった。


「小さなコミュニティの理解が社会全体に広がってほしい」と勝田さん。


理解の広まりは、少年たちの再チャレンジを許容する社会の構築につながる。


 


東日本大震災直後、同施設の少年たちは被災地のガレキを見て「誰かの役に立ちたい」と言いだした。


率先してガレキの撤去に取り組んだ少年たち。


「『オレ、生きてていいんだ』と言ってた子がいたのよ」と我が子のことのように語る大沼さん。


誰かに必要とされることは少年たちに生きる喜びや意味を与える。


 


ロージーハウスに関わった少年たちの約9割は、就労先で仕事を続けている。


ほとんどの少年は仕事に熱心だ。


ロージーベルでは就労した後も少年たちをサポートしている。


職場で問題を抱えたとき、少年と就労先との間に入り解決策を助言する。


「表情で(少年たちが)問題を抱えているかどうかわかる」と大沼さん。


 


非行をした少年たちの多くは中卒だ。


高卒、大卒を求める企業が多く、就労先は自然と限られてくる。


それでも非行をした少年を雇う企業が存在するのは、ロージーベル職員が信頼を得ているからだ。


 


復興のため外部から来た人が、家賃を滞納し、逃げる被害が増えた。


そのため住居を借りる際、保証人を親族に限っている不動産会社は多い。


少年たちの多くに、保証人となる人はいない。


問題は震災から3年経過した今も続く。


 


NPO法人である故の問題も存在する。


運営費の多くを寄付に依存しており、震災の影響で寄付は停滞している。


国からの助成金も少ない。職員の意思を継ぐ後継者の育成も課題だ。


大沼さんは「『ロージーベル』という少年たちにとって幸せな場所をなくしてはいけない、存続させることが大切」と語る。


多くの人が少年たちを取り巻く悲しい環境を知り、社会復帰の大切さを知ることが、非行の防止につながる。


今後もロージーベルの取組みは続く。


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。