染め物の魅力、伝える努力を 山形大2年 三浦紗樹
【商品が出来る工程を説明する武田さん(右)と佐藤さん(左)】
「伝統は自ら発信しないと廃れていくと思うんですよ」。そう話すのは、仙台市若林区にある武田染工場の社長、武田和弘さん(53)だ。
工場は江戸中期の創立から300年の歴史がある。従業員は12人。今も手作業で、前掛け、手拭い、半纏を専門に製造している。
染め物業界は、印刷技術の発展や後継者不足により長期衰退の傾向にある。さらに、2011年3月に東日本大震災が起き、被災した東北の染め物屋の廃業が相次いでいる。
武田さんが社長に就任したのは11年の夏。先代の社長だった父親が急逝し、広告会社を退職して跡を継いだ。
武田さんは伝統的な製品作りに加え、13年春に福祉施設や食品卸売会社など、異業種との提 携商品に取り組んだ。同年秋には「武田染工場製」と明示した自社商品の開発にも着手した。 「伝統に甘んじて、魅力を伝える努力が足りなかったのでは」と焦りを感じたからであった。
簡便な多色刷りのプリントと違い、多くの色を使って製品を染め上げるのは、とても煩雑な作業を伴う。手拭いの伝統的染色法「注染」の工程には、違う色で染める部分の周囲に、一つ一つ糊で土手を作る作業がある。染料が混ざらないようにするためだ。
提携商品を手掛ける際、異なる色の柄の間に1センチ程の間隔がないと、染められないことを提携企業に説明する必要がある。
ベテラン職人の佐藤恒穂さん(66)は「印刷と同じ感覚で頼んでくんの。それを“出来ない”って頭を下げなきゃいけないでしょ。大変だど思うのよ」と提携作品作りの難しさを指摘する。それでも、工場を取り巻く厳しい情勢を武田さんから説明され、「このままではいけない」という思いで、努力を重ねている。
不安は武田さんにもある。しかし、社長が迷えば従業員はもっと迷ってしまう。
提携商品や自社商品の取り組みの手ごたえは「まだ芽が出たばかり」。武田さんは「一歩でも踏み出さなければ何も始まらない」と固い決意で挑み続ける。
提携商品や自社商品の取り組みの手ごたえは「まだ芽が出たばかり」。武田さんは「一歩でも踏み出さなければ何も始まらない」と固い決意で挑み続ける。
--------
0コメント