C班原稿 カフェ・たらこカフェ 「新たな挑戦、タラコとともに」

東北学院大2年 阿部寛史

東北学院大4年 伊勢美沙子

東北大1年 川村昇




「誰もしていない新たなことに挑戦する」。

仙台市若林区新寺で「たらこカフェ」を営む高橋好子さん(58)のポリシーだ。

15席ほどが並ぶ店内は和ダンスやシャンデリアで装飾された独特の雰囲気。

タラコを使ったどんぶりやパスタ、タラコを詰めた焼きサンマの定食などを日替わりで提供する。

材料の仕入れ先である実家の「マルイチ高橋商店」(石巻市)のタラコや

金華サバのミリン干しといった水産加工品を販売するスペースもある。  




メニューの中でも高橋さんの信条が凝縮された苦心作が「タラコのケークサレ」だ。

ケークサレとは、フランス発祥の甘くないパウンドケーキ。

中心にタラコを丸ごと一本入れており、切り分けると日の丸型のフォルムが目を引く。

一口ほおばるとプチプチとしたタラコの食感とジャガイモのホクホク感に思わず顔がほころぶ。

次第にタマネギの甘味、ベーコンのうま味も広がる。



【客に料理を出し、談笑する高橋さん(中央)】




高橋さんの前職はディスプレーデザイナー。

東北各地でショーウィンドーの装飾や商品陳列などの空間設計を行ってきた。

体力的に限界を感じ始めた6年前、

思い浮かんだのは50歳を過ぎてなお家業に勤しむかつての両親の姿だった。




「家業を継ぐことは考えていなかった。でも、石巻のタラコを多くの人に知ってもらいたいという気持ちは昔からあった」。

タラコをPRしたい思いに火がついた。

デザイナーとして独創的なデザインを生み出してきた経験は

新しいタラコの味わい方を提案する「カフェ」という答えを導き出した。




2011年の東日本大震災で予定は2カ月ずれたが、

同年5月、開店にこぎつけた。

石巻市によると、震災で市内のタラコを含む魚卵加工生産量は、

以前の3割程度に落ち込んだ。

「被災地の後押し」。

直接言葉にはしないが、

新しいメニューを紹介することは“石巻産”の魅力発信に貢献する。

最終的には消費拡大につながり、古里へのエールとなる。




「常に新しいものを生み出し、お客さんをアッと言わせ続けたい」。

古里の味の新しいデザインに思いを巡らせ、驚きの形を探す。


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。