守りたい 3代続くコロッケ店  東北学院大2年 平田真莉子

 仙台朝市(青葉区)にある「ころっけや」の店先には、ガラスケースに21種類の揚げ物が並ぶ。「毎度、どうもね」。店主の齋藤達也さん(30)が店の奥で、コロッケの生地をこねながら常連客の笑顔を見送る。


 「ころっけや」は祖父・正一郎さんが1958年に始めた。父・正司さんが2002年に2代目店主になり、14年に達也さんが後を継いだ。開店当初からの看板メニューは、北海道産の男爵芋を使ったコロッケ。1つ65円。1日に1500個を売る。じゃがいもの甘みをいかした優しい口当たりで、遠方から足を運ぶファンも多い。


 達也さんが店を手伝い始めたのは24歳の時だった。体調を崩した母に代わり、勤めていた空調修理会社を辞め店に立った。父や従業員と共に店を切り盛りするリズムをつかみ始めた矢先の14年冬、父が病で逝った。まだ55歳だった。突然失った、師でもあった父の背中。達也さんは28歳にして、半世紀続く店の看板を背負った。


 それまでは父が作っていた生地。レシピはない。じゃがいもの水分量は季節によって変わるため、勘と経験が頼りだった。達也さんは亡き父の味を追い求め、毎日調理場に立って生地をこねた。生地作りだけではない。店の経営のこと、朝市仲間との付き合い…。店主としての役目をこなし、店を守ることが出来るのか。不安がのしかかった。支えになったのは従業員の存在だった。キャリア20年以上の女性は、達也さんが知らない父の姿を語ってくれた。「大丈夫だから、頑張れ」。従業員のエールが3代目を奮い立たせた。


 達也さんが店主になって2年。「ころっけや」の看板の前には今日も列ができた。

「よしっ」。達也さんは生地をこねる腕に力を込めた。祖父、父の在りし日の姿を思い浮かべながら。



▲作りたてのコロッケを客に手渡す達也さん。

創業58年の歩みを受け継ぐ。


 


 


 


 


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河北新報社 記者と駆けるインターン

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