『本物』のプロレスラーに 仙女の強さ 東北大2年 下野谷涼子

「仙女魂」。毛筆で書かれた大きな文字をのぞむリングで、赤いジャージの選手がポスターのデザインをしている。激しく闘う姿とは違う、選手のもう一つの「顔」があった。


7月に10周年を迎える、仙台市若林区清水小路の「センダイガールズプロレスリング」(仙女)は、キャリア20年の里村明衣子さん(36)が代表を務める。仙女は、里村さんが先輩から受け継いできた「実力重視、本物のプロレス」を叩き込まれた女子プロレス団体だ。


里村さんは、「華やかな舞台の裏には地道な苦労がある。リングの上で活躍するだけがプロレスではない」と語る。里村さんも含めた5人の選手全員が、運営面でも力を発揮している。


 昨年デビューを果たした選手の一人、魔界から降臨したカサンドラ宮城さん(自称10001歳)は、グラフィックデザインの能力を生かして、試合の宣伝用ポスターを作製している。プロレス好きの学生を集めたサークルづくりを提案したのも彼女。自身が学生サークルでプロレスに出合った経験に基づく。「プロレスに興味を持つきっかけになれば。サークルを通して良い友人関係も築いてほしいのだ。不不不…」。2月から募集を開始している。


 昨年「週刊プロレス新人賞」を受賞した橋本千紘さん(23)は、選手の写真やTシャツなどの仙女グッズの販売を担当する。試合会場での売れ行きから、次回仕入れる商品の種類や数を管理している。


 仙女設立時から所属する選手、DASH・チサコさん(27)は当初から、里村さんとともに営業の仕事に携わる。企業の信頼を得るため、スーツではなく、スポンサーの社名が入った仙女の赤いジャージで訪問することもある。「たとえプロレスをやめても社会で生きていけるくらいの力がついた」と自信をみせる。


「仙女の選手はどこに出しても恥ずかしくない」と里村さんは誇らしげに言う。仕事や練習など、目立たないところでも努力をすることで、プロレスラーとしても、一人の人間としても、大きく成長している。仙女の強さは「本物」だ。



【リングを机代わりに、パソコンでポスターのデザインをするカサンドラ宮城さん。奥には「仙女魂」の文字が並ぶ。】


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河北新報社 記者と駆けるインターン

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