墓石業界のアンパンマン 東北大2年 三木拓弥

泉ヶ岳のふもと、仙台市泉区朴沢の田園地帯を走る車を、アンパンマンが迎え入れる。平屋の上部には「杜の石屋 ストーリー イン ストーン」と刻まれている。


「石を通じて、お客様を笑顔にしたい」。社長の佐藤真也さん(41)は生き生きと経営理念を語る。創業は2005年1月。父の採石会社から小売店として独立したのがきっかけだ。グループ会社内で、墓石の採石から建立まで手掛けるため、商品を低価格で提供できるのが強みだ。


店先に子どもに人気のあるアンパンマンの石像を設置している。店内に置いていた小さなアンパンマンの石像が好評で、店先に新たに建立した。ガラス張りの明るいショールーム風の店内には、女性スタッフを配置している。女性と子どもに優しい環境を作るための佐藤さんのこだわりだ。


依頼者が納得するまで何度でも打ち合わせを行い、設計図を書き直す。「お客様のありがとうの一言があるから続けられる。モノを売ってお金を頂いて、その上感謝される。こんな仕事なかなかないよ」と佐藤さんは自らの仕事に胸を張る。


顔が濡れて力が出ない。創業後しばらくは赤字続きで、まさにそういう状況だった。4、5年後にようやく事業が軌道に乗っていく中で、東日本大震災が起こった。次々と舞い込む墓石の修理依頼に着々と応えていった。創業時から「宮城県内一円」という広範囲で、一つ一つの依頼に丁寧に対応してきたからできたことだ。


震災から2、3年経つと仕事は落ち着き、墓石以外の仕事依頼も増えてきた。店先の石像が目にとまったのがきっかけで、2015年、宮城県大郷町大郷小に「アンパンマン」と「ばいきんまん」が並ぶ「輝く歯モニュメント」を建立した。今では、子どもたちに愛される大郷小のシンボルだ。


「お客様の笑顔を見ることが私にとっての幸せにつながる。石でできることなら何だってする」。佐藤さんと正義のヒーロー「アンパンマン」の姿が重なる。   


 


店先にあるアンパンマンの石像と佐藤さん



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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。