思いは石に刻んで 法政大3年 萬紗帆

 「WE START FROM HERE TO MAKE EACH OF OUR CUSTOMERS HAPPY. 」。仙台市泉区朴沢にある石材販売店「杜の石屋 ストーリー イン ストーン」の前には店名とともに、経営理念が英文で刻まれた石碑がある。「石を通じてお客様の笑顔づくりをここから始める。笑顔の時間を増やすお手伝いをしたい」。社長の佐藤真也さん(41)は石に刻んだ決意を語る。


 創業は2005年1月。佐藤さんが29歳の時、採石会社を営んでいた父から独立した。墓石を中心に、石造商品の注文を請け負い、グループ全体で、採石から加工、設置までを行うのが強みだ。


 「多様なニーズに応えたい」との思いで、佐藤さんが国内外から集めた石は100種類以上。宮城産の黒石はきめが細かく、チリ産のアンデスレッドは棚の中でもひときわ目立つ。さすがは石屋の社長、見本の説明をし始めると止まらない。その思い入れぶりには、「他社にはない品揃え。もはや商売というよりコレクションです」と営業部長の鶴巻伸さん(51)も舌を巻く。


 



↑石の種類を熱く語る佐藤真也社長


 


 東日本大震災後は、商圏としていた宮城県だけでなく、求めがあれば東北どこにでも駆け付けた。墓石の修理や立て直しはもちろん、「石屋にできることは何でもやる」という意気込みそのままに、震災で横倒しになった青葉神社(青葉区)の石造りの大鳥居復元も引き受け、仙台藩祖・伊達政宗を祭る地域のシンボル復活に尽力した。


 この夏引き受けたのは、モニュメントの制作依頼。津波で被災し、16年3月に閉校した仙台市中野小(宮城野区)の全校児童、40人の手によるモザイクアートを石の額で縁どり、中野小の跡地に設置した。大人が手を広げるほどの石の記念碑にこめるのは、「蒲生の自然を残したい」という児童らの願い。石は人とともに時を刻み、未来に思いをつないでいく。


 「永く残り、見た人に影響を与えるのが石。だからこそ、たくさんの人を幸せにできる可能性がある」。会社設立から11年、店先の石碑に誓った原点を佐藤さんは忘れない。


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河北新報社 記者と駆けるインターン

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