ジェラテリア ナチュリノ 地域とつくるジェラート 同志社大2年 浅田將希

一口で表情が笑顔に変わっていく。滑らかな舌触り、広がる芳醇な香り。口の中には余韻が残った。

 名取市にあるジェラート専門店ナチュリノ。常時18種類あるジェラートのほとんどに地元の新鮮な食材を使う。「地域の方、生産者の方みんなでお店を作り上げているんです」。代表の鈴木知浩さん(41)は胸を張る。

 名取市生まれ。食品卸売会社の二代目として家業を継いだ。

 ジェラートに新規参入した着想は、東日本大震災から得た。相次ぐ余震で、怯えていた子どもたちがアイスを一口食べて笑顔になるのを目の当たりにして、「アイスの力」を知った。ただ仕入れて運ぶだけでなく、自らの手で作りたいと考えるようになった。

 地元の窮状も背中を押した。津波で被災した田畑、無事に耕作できても根強く残る福島原発汚染の風評被害―。「やられっぱなしでは終われない。生産者の頑張りが報われる道はないか」。ひらめいたのが、素材本来の味がより伝わるジェラートだった。

 看板商品「お米のジェラート」に使うコメを提供しているのは、名取市の大友慎吾さん(32)。津波で被災した土地で農業を営む。「自分の育てたコメがこんな身近な場所で、ましてやジェラートとして売られるとは」と照れつつ、ナチュリノの取り組みに感謝する。ジェラート一つひとつに「思い」が詰まっている。

 「これからも地域とともにあり続けたい」と願う。目標は生産者の方に安定的な収入を得てもらうこと。1店舗だけでは使用する作物の量に限りがあり、生活を支えるまでには至らない。しかし店舗を増やすことによって、新鮮な野菜だけを使うナチュリノの品質を落としたくない。そのために安価な新ブランドの立ち上げやインターネット販売を4月から始める。

 「やられっぱなしでは終われない」。地域に新しい「味」をつくる挑戦は次のステージに進む。



お米のジェラートを手に地元素材の魅力について語る鈴木さん

河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。