ジェラテリア ナチュリノ 地域の思いをジェラートに 尚絅学院大1年 遠藤優佳
口にした瞬間、とびきりの笑顔と「美味しい!」の声。色鮮やかなジェラートが並んだ店は、寒い日にも関わらず満足げな表情で溢れている。
名取市にあるジェラート専門店ナチュリノ。2015年7月に開店した。18種類ある商品のほとんどに地元産中心の素材を用いる。イチゴなら宮城県亘理町産で、イチジクならお隣の山元町産。原料の生乳は毎朝、色麻町から仕入れる。「美味しいと思ったら、今度は食材も買ってほしい。ジェラートを通じて、地元食材の魅力を知ってもらうのが店の役目」。代表の鈴木知浩さん(41)の願いは、地域振興にある。
名取市に生まれ、地元食品卸会社の二代目として家業を継いだ。故郷の農地は東日本大震災の津波で傷つき、地元農家が懸命に蘇らせた作物は、福島原発事故の風評被害という第二の壁で販路がしぼんだ。
「いつまでもやられっぱなしではいられない。頑張りが報われる道はないか」。ひらめいたのは、万人から愛されるジェラート作りだった。地場の素材を探し求め、県内で被災した生産者らを訪ね歩いた。
看板メニュー「お米のジェラート」は、名取市の農業法人「美田園マルシェ」のひとめぼれを用いる。専務の大友慎吾さん(32)は、「目の前で売れていくことが嬉しく、励みになる」と感謝する。ナチュリノは地元生産者と消費者をつなぐ懸け橋だ。
「恵みを感動に」をコンセプトに、新鮮さに重きを置く。だから冷凍食材は使わない。そのため1店舗だけでは使える農産物の量に限界がある。「素材の美味しさを伝えながら、安定的な収入を望む生産者の期待に応えられる方法はないか」。理念と現実の間に悩んだ末、たどり着いたのは冷凍のノウハウを生かした低価格の新ブランド。17年4月からネット販売にも乗り出す。
地元食材を使い、地域の結び役となるナチュリノ。「被災地」の名を溶かし、これからも地元生産者の思いを日本中に届ける。
【ジェラートの魅力をアピールする鈴木さん。店には生産者の写真を大きく掲げる】
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