仙台木地製作所 伝統の良さ伝える 青いこけし 慶應義塾大3年 高橋杏璃

 細い筆先から、青のろくろ線がさっと入る。仙台木地製作所(青葉区芋沢)の作業場に座るのは、遠刈田系こけし職人の佐藤康広さん(41)。青色に染まる「インディゴこけし」を作り始めて4年がたつ。

 衣料品ブランド「ビームス」との出合いが製作のきっかけ。東日本大震災を機に宮城の伝統工芸に注目した担当者の「青いこけしってないよね」の一言が、佐藤さんの探求心を刺激した。

 伝統的なこけしに使われるのは赤、緑、紫、黄の4色。紫外線に弱く退色が早い青色は、それまで主流ではなかった。アクリル絵具を使うことなくどう濃い青を作るか。試行錯誤を繰り返すこと半年以上。従来の染料を調合してできたブルーと、藍染にヒントを得た藍色、2種類のインディゴこけしが誕生した。

 こけしブームと言われ多様なこけしが生み出されているが、「伝統の型が失われてしまうこけし作りには抵抗がある」と佐藤さんは語る。「もっと速く作れるかもと新しい方法を試したこともある。でもたいていの場合、伝統が正しいんだよね」。歴代の工人が試行錯誤の末に辿り着いた伝統こけしは、完成形に近い。

 一方、買う人がいないと廃れてしまう現実も理解している。「新しかろうが古かろうが、お客様は良いと思ったものを買う。伝統こけしの良さを伝えるには、商品として答えを出すしかない」。現在は、青色に合う胴体部分の模様を製作中。仙台で発達した染物の常盤型を取り入れ、遠刈田の赤い菊とは異なる趣を作り出している。

 他の若手職人との連携にも積極的で、たんす職人らと互いの作品について言い合うこともしばしば。地域の作り手が高め合い、産地として東北を盛り上げるのが目標だ。

 販売会をすれば1時間に600本が売れるほどの盛況ぶり。そのうち400本ほどは、遠刈田系伝統こけしだ。インディゴこけしを通して伝統こけしの良さに気づいてほしいという佐藤さんの想いは、顧客にも届いている。



藍色のインディゴこけしと佐藤康広さん。


河北新報社 記者と駆けるインターン

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