仙台木地製作所 つないだ絆 こけしに活かす 東北大2年 山田剛

東日本大震災は、甚大な被害をもたらした一方、新たな絆を結んだ。こけし職人、佐藤康広さん(41)はファッションブランド「ビームス」との出会いを振り返る。両者の巡り会いが、藍色の「インディゴこけし」を生むきっかけとなった。

佐藤さんがこけしを作るのは、仙台木地製作所(青葉区芋沢)。世間が復興へと歩みだした2012年、ビームスの担当者が工房の扉を叩いた。復興の一助となることを目指し、宮城の伝統工芸の工人を訪ね歩いていたという。「青いこけしってないんですね」。他愛のない会話のあと、担当者がぽつんと口にした一言に探究心がくすぐられた。

確かに青色のこけしはほとんど存在しない。発色が弱く退色も早い青色は、絵付けに適さなかったのだ。濃い色の出る染料を新たに開発しなければならなかった。一方で「新しいものをむやみに取り入れて、伝統を壊すことはしたくない」との思いも強い。佐藤さんは大正時代から仙台に伝わる藍染め技術を使うことを思いつく。本来は何度も染め直して着色する染料を、一度で濃く発色するよう試作を重ねた。納得のいく色ができたのは1年近く後のこと。上品にくすんだ藍が完成した。

ビームスの担当者とは今でも良きパートナー。伝統を重んじる姿勢を共有し、ともにインディゴこけしの販売会も行っている。佐藤さんは「震災の前後で自分は何も変わっていない。周りが関心を寄せてくれるようになり、出会いが増えた」と当時を振り返る。

今では年に数回、県内の若手工人たちの集まりに参加。たんす職人らと作品について語り合う。「多くの出会いを通して職人同士のつながりも大切にしたいと思うようになった」。

 切磋琢磨を続ける佐藤さんは、今日もこけしに筆を走らせ、伝統と絆をつないでいく。


インディゴこけしの絵付けをする佐藤さん

河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。