仙台木地製作所 伝統があるから今がある 東京農業大1年 吉田萌香
「古いものは魅力的ではないと言われるが、伝統の中に良いものはたくさんある」。仙台市青葉区芋沢にある仙台木地製作所のこけし職人、佐藤康広さん(41)は力強く語る。これまでの常識を破る藍色の「インディゴこけし」を生み出したことで注目を集めている。
「青いこけしってないよね。」きっかけは、ファッションブランド「ビームス」のレーベル「フェニカ」のディレクターとの出会いだった。フェニカは「デザインとクラフトの橋渡し」をテーマとし、全国各地の民芸品を基にしたアイテムを取り扱っている。東日本大震災後は、復興を後押ししようと、宮城の伝統的な工芸品を多く紹介した。康広さんはディレクターと話し合い、考え方に共感。青いこけしを作る挑戦が始まった。
青色は発色が弱く、退色が弱いことから絵付けにあまり使われてこなかった。染料として何を用いたら良いのか。答えを大正時代から仙台で愛されてきた藍染の中に求めた。何度も染め直すことで色を濃くする従来の藍染とは異なり、こけしの絵付けは二度書きすることができない。色を強く出すのが難しく、試作期間は一年近くにも及んだ。見た目のモダンさから一見新しいもののように見えるが、その原点は古くからの技術なのだ。
最近では「こけしブーム」が起こっている。本来のこけしの他にも、こけしをモチーフにした可愛いグッズが人気だ。「ブームはありがたいが、伝統こけしの良さも知ってほしい」。伝統こけしには道具や形、模様など全てに型がある。木の削り方などを新しい方法で試したこともあったが、受け継がれた方法にはかなわなかった。決められた型には理由があった。仕事をするたびに江戸時代から続く技術の偉大さを実感する。
「顔を描く仕事だから、人柄が出ると思う。真面目にコツコツ生きてたら良いこけしになるかもしれないね」。先達の声を聞きながら、康広さんは今日もこけしと向き合う。
インディゴこけしに絵付けをする佐藤さん
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