【C班原稿】Lamp of Hope(仙台市青葉区)被災地の「今」を照らす

 壁一面に何十本ものキャンドルが並ぶ。花柄、メッセージ入り、香り付き…。仙台市青葉区北山の「Lamp of Hope(ランプオブホープ)」は、キャンドルの制作・販売を行う専門店だ。

 鳥の羽を閉じ込めた優雅な一本に炎が灯される。揺れるオレンジ色の光。「思わず見入ってしまいますよね」。キャンドルの作者で店のオーナーの相原真也さん(45)は柔和な笑顔を浮かべた。

 2011年の東日本大震災の時は、仙台で会社勤めをしていた。自分が生きていくことに精一杯で、被害が大きかった人たちを支援する余裕はなかった。「何かで人の役に立てないか」と模索する中、目をつけたのがキャンドルだった。

 広域に停電した被災地で、ロウソクは暗闇を照らす必需品として見直されていた。加えて、揺らめく炎は見る人に心の安らぎを与えると認識された。

 「キャンドルを灯す喜びを広めたい」。独学でキャンドル作りのスキルを身に付け、12年9月、店をオープンさせた。手製のキャンドルを売るだけでなく、キャンドルの魅力により深く触れてもらおうとワークショップも実施。自分好みのデザイン、香りのキャンドルを作り、持ち帰られるプログラムを用意した。

 震災から時が経つにつれ、街には少しずつ活気が戻り、節電の機運は低調になったと感じた。震災直後、枕元に備えた懐中電灯は、いつのまにか目の届かないところに消えていた。

 キャンドルを通して何かできないか−。震災の1年後、津波被害が大きかった塩釜市で数百本のキャンドルを灯すイベントを開いた。翌13年以降は震災の風化が進んでいると感じた仙台市中心部に場所を移し、今を問い直すメッセージを毎冬発信し続けている。

 寒空の下、大小様々なキャンドルのともしびが人々を包む。手を合わせる人、写真を撮る人。「どちらでもいい。『追悼』と『防災』のきっかけになれば」

 もう一度炎を見つめる。「いつでも温もりを感じられるお店にしたい」。相原さんの表情は、キャンドルのともしびのように暖かかった。

キャンドルを灯す相原さん。店内には数十本のキャンドルが並ぶ。

河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。