Volume1(ver.)(仙台市青葉区)「人と音楽の縁結ぶ」  東京大2年 足立愛音

 仙台市青葉区立町の改装アパートの3階にある、中古レコード店Volume1(ver.)(ヴォリュームワン・ヴァージョン)。一歩入ると、棚いっぱいに並べられた約3000枚のレコードとCD、大きな音量で流れる音楽に迎えられる。ジャズやロック、民族音楽など、扱うジャンルは幅広い。

 店主の三浦尉(やすし)さん(48)は一度聴いて気に入った作品を厳選して店頭に置いている。「この店が音楽との出合いの場になってほしい」。お客さんに頼まれれば、好きなバンドや音楽を聞く習慣などについての会話を通して、客にぴったりの一枚を見つけ出すこともある。

 仙台市出身の三浦さんは、両親の影響で幼い頃からレコードを聴いて育った。専門学校進学を機に上京し、学校に通いながらバンド活動やレコード屋でアルバイトをした。その後仙台に戻り、現店舗の前身であるVolume1に通う中で店の手伝いをするようになった。

 2011年3月、東日本大震災が発生。店の被害は小さく、一ヶ月後に再開できたが、世の中の空気は一変していた。被災地は自粛ムードに覆われ、店頭に置かれたサザンオールスターズの「TSUNAMI」を見て「不謹慎ではないか」と責める客もいた。

 震災から4年、Volume1 は閉店することが決まった。仙台のレコード店が相次いで閉店していく中、音楽好きの集う場所が減っていくことに危機感を覚えた。「自由に音楽を楽しむ場を仙台に残したい」。三浦さんは店を引き継ぐことを決意し、翌春に現店舗をオープンした。

 店員は三浦さん一人、面積も7分の1に縮小して再出発した。部屋の端と端にいても声が届く広さは、「音楽談義の場としてちょうどいい」と三浦さんは微笑む。以前の常連客も次々と顔を出してくれた。「昔ながらのレコード店のように、音楽について好きなだけ話せる。良心的な価格設定もありがたい」。多賀城市の渡邉洋さん(65)は週一回、店に通う。

 インターネットを通して誰でも手軽に音楽を購入できる現代。多くの人が形の無い音楽に親しむようになった今、改めてレコードの魅力を感じている。「個性溢れるジャケットを眺めながら、重厚感のある音を楽しめる。聴けば聴くほど溝が彫られていって、聴いた形跡が残るのも魅力」。

 今日もまた、音楽を求めにドアを開く。

河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。