和がき(東松島市東名) 陸(おか)の漁師 全国にカキを  上智大3年 松本拓


 宮城県東松島市東名に水産卸「和がき」は全国の飲食店向けに三陸産のカキを販売する。代表でカキ漁師の阿部年巳さん(41)は船酔いしやすく、泳げない。「陸の漁師」と自称し、親しみやすい笑顔を見せる。

 和がきは東松島や女川など宮城県内の約30人の漁師と提携し、年間を通じてカキを出荷する。出荷量は特別多くないが、カキの身の大きさや味、鮮度など質にこだわる。

 「社長といっても何にもしていない」。阿部さんは照れ臭そうに笑う。販売や営業や輸送、イベント企画などは他の社員が担う。社員それぞれの得意分野を見抜いて仕事を任せ、阿部さんは会社全体のマネジメントに徹する。

 東日本大震災で地元のカキ養殖施設はほぼ壊滅。阿部さんも稼業を継いでカキを養殖していたが、父は亡くなり自宅や漁船は津波で流された。 

 現実を受け止めながら、悲観に暮れることはなかった。震災前から「いいカキを作ってさえいればいい」と販売に無頓着な漁業者の「常識」に疑問を抱いていた。「何もかもなくし、ゼロからのスタートだ」。2011年12月、漁師仲間2人とカキの販路開拓を目指し和がきを立ち上げた。

 最初は販路が乏しく借金を重ねた。「宮城のいいカキを全国に届けたい」。全員がその一心だった。漁師の事情が分かる阿部さんは漁師への営業を担当、計算が得意な社員には経理など事務職を任せるなど、マンパワーを最大限生かした。それぞれは毎日何十軒も営業に回ったり、深夜まで作業したりする日々が続いた。その結果、「また食べたい」という声が徐々に寄せられ、全国400店以上の飲食店で提供されるまでになった。

 販売が軌道に乗り、次の目標は販売量を増やすことだ。東松島産のカキに代表される宮城のカキは甘味が強く、貝柱が大きく全国に誇れる味だ。「いずれか宮城の全ての海域のカキを仕入れ、全国に届けたい」。陸の漁師は目を輝かせた。

 「和がき」代表阿部年巳さん(41)。自慢の牡蠣を嬉しそうに見せる。


河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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