ミチ美容室(仙台市青葉区子平町) 人を繋ぐ 町の美容室 立命館大学 3年 下林瑛典

「髪も心もスッキリして帰ってもらいたいのよ」と店主・日下あきこさん(50)は語った。

母・小池ミチ子さん(81)が青葉区子平町に店を構えて54年。

訪問カットから卒業式、成人式の着付けまでこなす。まさに「地域と共に」を体現した美容室だ。

「明るくて親切な店、髪を切らない日もお茶を飲みにくる」と創業当時からの常連客は語る。

約15平米の店内には温かな雰囲気が流れる。

日下さんは子平町で生まれ育った。母の背中を追って美容師になり、店を手伝った。

常連客が足繁く通ってくれたため、出産後でさえ休む間もなく働きつづけた。

そんな時、客が代わりにオムツ替えをしてくれたことがあった。

「うちの子はお客さんに育ててもらったようなもん」と目を細める。

多くの出会いを経て、より一層大切な店になった。

そんな日常を東日本大震災が変えた。

ライフラインが寸断され、10日以上の営業中止。

追い討ちをかけるように、毎日「仙台に行くから」と電話をくれる亘理町に在住していたおばが津波の犠牲に。

「次」は必ずくるわけではないことを思い知らされた。

悲嘆に暮れていたある時、「髪だけでも洗ってあげて」という客の声に応え、電気ポッドでお湯を沸かせて髪を洗った。

身だしなみを整えることは心を整えることだ。笑顔で帰っていく姿にそう教えてもらったような気がした。

 普段は他愛のない世間話をしている常連の口からも「震災」という単語は何度も出た。涙を流しながら、被災時の苦労を口にする客もいた。特別なことは何も言えない。「話を聞くのも大事な仕事」。どんな話にも耳を傾け続けた。

 

震災から約7年と6ヶ月。

日常が戻りつつある。あたりまえの日々だからこそ気づいたことがある。「一期一会、次は無いかもしれないから」

この想いを胸に「ミチ美容室」は、これからも誰もがリラックスできる場所であり続ける。

笑顔で髪を切る日下さん

河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

0コメント

  • 1000 / 1000