ケヤキコーヒー 一杯がもたらす出会い 中央大3年 坪倉淳子

17席の店内は、ジャズの流れに乗ったコーヒーの香りで満たされていた。

カフェ「ケヤキコーヒー」は、店主・松木勇介さん(30)が2016年夏、仙台市若林区荒井の新興住宅地内にオープンさせた。コンセプトは「コーヒー一杯がもたらす出会いや繋がりを大切に」。地域との繋がり意識し、サイドメニューは全て仙台市内の洋菓子店などから取り寄せる。店内は木材をふんだんに使用し、杜の都をイメージした。「仙台を代表するカフェになって、人が集う場にしたい」。東日本大震災の影響が今も続くふるさと・仙台市若林区ににぎわいを取り戻すことを目指している。

 11年3月、勤務地の東京から戻ると、生まれ育った若林区荒浜は変わり果てていた。震災後、沿岸の一部は住宅の建設ができなくなった。旧住民は各地に移転し、離散したケースもある。

 どうすれば力になれるのか―。カフェ巡りの趣味をヒントに、コーヒーの力で人が集う場を築こうと一念発起した。航空整備士を辞め、同時に3軒のコーヒー店で働き基礎を学ぶ。荒浜小の同級生だった麻記さん(30)と結婚したのち、独立を叶えた。

 今年3月11日には、震災遺構となった母校の「旧荒浜小」で、集まった卒業生らにコーヒーを提供した。旧住民がコーヒーを通し再会できる場づくりにも励む。

 松木さんが意識するのは、地元のコミュニティだけではない。3年間修業した長野県・軽井沢の名店「丸山珈琲」との繋がりも大切にしている。金色の字で「丸山珈琲」と刻まれたボールペンが、エプロンの胸ポケットでいつも輝く。独立時に送別で貰ったものだ。豆も師匠の店から取り寄せている。木目が特徴的な店内は、「軽井沢の自然を再現した部分もある」という。コンセプトの「一杯がもたらす出会いを大切に」には、仙台と軽井沢の出会いという意味も込められている。

 質の高いコーヒーを求め、客は関東圏からも訪れる。満席になることもしばしばだ。記者が「『自分の城』を持てたんですね」と問いかけると、松木さんが言う。「いえ、やっぱりお客さまのための場所ですよ」。

訪れた男性客と談笑する松木勇介さん(左)

河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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