【C班原稿】布久満(ふくみつ)(仙台市太白区)/世代超えて着物つなぐ

青山学院大2年   長屋美乃里

東北学院大2年   渡辺紗彩

同志社大3年    平目一輝

 落ち着いた色合いの反物が店内に並ぶ。着物姿で出迎えるのは谷政子さん(65)。仙台市太白区長町で、夫勝昭さん(72)と着物店「布久満」を営む。創業28年目。店名には「布(着物)を幾久しく満足していただけますように」との思いを込めた。販売をはじめ、仕立て直しや着物文化の継承に力を入れる。

 「新しい着物を売るだけではなく、お客さまが今持っている物を末永く着られるよう手助けすることも大切です」。他店では敬遠しがちな染み抜きや染め直しも、できる限り引き受け、専門業者との橋渡しを担う。

 東日本大震災の1カ月後、石巻市に住む顧客から電話があった。「津波をかぶった着物をきれいにしてもらえないか」。祖母、母、娘の歴史を刻んだ20枚以上の着物に、泥や油、臭いが染み付いていた。政子さんは、再生は難しいと感じたが、依頼を引き受けた。

 2カ月後、専門業者の尽力でほとんどが袖を通せる状態で戻ってきた。

 「何度も仕立て直すことができる着物は、いわば『究極のリサイクル品』」。着物は、糸をほどくと元の1枚の布、つまり反物の状態に戻すことができる。着る人の寸法に合わせて、その都度作り直された着物は、世代を超え、時を超え、大事に受け継がれる。

 次世代に着物の魅力を伝えようと週に2回、着付け教室を開き、仙台市内の高校でも毎年、浴衣の着付けを教える。一昨年「ゲストティーチャー」として母校の長町小に招かれた際は、祖母の着物を着て行った。「長く大切にされていることに子どもたちは驚き、真剣なまなざしで話を聞いてくれました」と喜ぶ。

 「着物店として商いをし、利益を出すことは大切ですが、それだけではありません」。店に訪れる全ての人に、反物の産地や織り方、染めなど着物に関することを丹念に話す。

 一人一人に合う反物を見立てると、客は笑顔を見せてくれる。

 着物を幾久しくー。

 育んだ次世代のファンを見送る。


「着物を大切に着てほしい」と語る谷さん

河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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