布久満(仙台市太白区)「 ひとの思い 着物で結ぶ」 青山学院大2年 長屋美乃里

▼着物の良さについて語る谷政子さん。自らリメイクすることもある。


 しっとりと落ち着いた色合いの反物が並ぶ店内。着物をリメイクした帯を締めた女性が出迎える。谷政子さん(65)だ。長町にある着物店「布久満」を、夫勝昭さん(72)と営む。創業28年。販売や仕立て直しの窓口を担うほか、着方教室を開く。

 店名には、「布(着物)を幾久しく満足していただけますように」と思いを込めた。「お客様が受け継がれた着物を大切に末永く着られるように」と一人ひとりの要望に丁寧に応える。

 政子さんは、着物の仕立て直しやクリーニングを積極的に引き受ける。他の店では断るような汚れとも向き合ってきた。

 東日本大震災の1ヶ月後、石巻市に住む顧客から、電話が入った。「津波で汚れてしまったから、きれいにしてもらえないか」。祖母、母、娘の着物は20枚を超えた。泥を被り、再び袖を通すには難しい状態だったが、政子さんは顧客の思いをくみ取り、引き受けた。着物の加工業者の尽力で、手入れされた着物のほとんどは、息を吹き返した。

 着物は、糸をほどくと、元の1枚の布、つまり反物の状態に戻る。何度も仕立て直すことが可能なため、「究極のリサイクル品」である。着る人の寸法に合わせて、その都度作り直された着物は、祖父母から子、子から孫へと、大事に受け継がれている。着物の持つ良さは、ここにある。

 着物に親しんでもらおうと、店に訪れた客には、産地や染め、折りなど着物に関することを、心を込めて話す。

 毎年、浴衣の着方を教える講師として、仙台市内の高校に出向く。おととしには、母校の長町小に、「ゲストティーチャー」として招かれた。祖母から受け継いだ着物を着て来たことを伝えた。「長い間大切に着られていることに、驚いていましたよ。真剣なまなざしで聞いてくれました」と喜ぶ。

 一人ひとりの歴史を積み重ねる着物を、長く大切にしたい。「着物屋を生業とする者として、着物文化を伝え、世代を超えて受け継がれた思いをつなぐことが、使命です」と語る。

河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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