岩井畳商工店(仙台市太白区) 好きの先に、秘めた熱  上智大2年 津田真由子


「畳が好きって言われるとうれしい。畳に注目をしてもらうきっかけを作れたらおもしろいかなって」。とつとつと語る職人の目には、静かに燃える炎が見える。

 仙台市太白区長町南に店を構える「岩井畳商工店」の3代目、岩井武宏さん(57)。手先の器用さと職人30年に及ぶ技術でコースターやマグネットなどを畳で作り、若林区の陸奥国分寺薬師堂で毎月8日に行われる「手づくり市」に3年前から店を出す。

 畳小物の魅力に出合ったのは、畳職人になるべく通った職業訓練校の時。博覧会で、畳で作られた丸い形の椅子を見た。職人の繊細な技術と畳を使った大胆な発想に惹きつけられた。

「作ってみたい」。素直にそう感じた。

職人として畳を扱う技術もついてきた30歳手前の頃、見よう見まねで小物を作り始めた。サイコロ、サッカーボール、座布団…。色々なものを畳で作った。「一個作り終えると、どんどん次のアイデアが頭に浮かぶんだよね」。先代から受け継いだ店を一人切り盛りする多忙な日々でも、小物を作る手は止まらなかった。

「店を継ごうかな」。以前まで畳屋を継ぐ意志を見せなかった息子がそう言ってくれた時、すごく嬉しかった。その反面、不安な思いも胸に広がる。年々減る畳の仕事。震災を機に辞めていく同業者たち。「畳屋はいつ必要とされなくなってもおかしくない」。それを自分が一番わかっているからこそ次の代にバトンを渡すことが不安だった。

畳屋として、父親として。心に小さなしこりが出来た時、「てづくり市」に誘われた。 「手間はかかる割に、売り物としては儲からない。めんどくさいなぁ」。最初はなかなか乗り気になれなかった。しかし、「畳をアピールするチャンス」になると思い直し、三年前の秋に参加を始めた。お客さんの声を直接聞けたり、嬉しそうに商品を手にする姿を見ることは新しい刺激にもなった。

畳で小物を作ることが好き。畳の良さをもっと知ってほしい。二つの信念が畳職人の目の奥に宿る。

「次は子供が入れるくらい大きい魚のオブジェを作りたいんだよね。なかなか難しくて設計図だけでも10回は作り直したかな。」

時代に流されつつあるものに「好き」の二文字で挑戦を続ける。

てづくり市に向け、畳コースター作りに励む岩井さん。

河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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