岩井畳商工店 畳職人小物作りに熱中 東京外国語大3年 飯岡真凜

 「一年間で360日は作っています。暇さえあれば店を回って、使えると思った材料は全部買い占めてしまいます。」作った小物を手にして、照れくさそうに話すのは仙台市太白区「岩井畳商工店」三代目の岩井武宏さん(58)。89年続く老舗の主人が額縁やコースター,ヘアピンなどの小物を、畳を使った独自の方法で生み出す。

 19歳の時に宮城を離れ、埼玉県畳高等商業訓練校で、週六日の技能実習は勿論、折れた針の供養まで、三年間畳づくりを学んだ。「最初は家を継ぐ為だったのが作っていくうちに、畳を更に深く知りたくなった。」在学中に参加した畳の展覧博で「有職(ゆうそく)畳(だたみ)」を知る。天皇陛下の宮中に由来し、寺や神社などに受け継がれた畳で、畳の縁の柄がその主人の身分を示すという特徴がある有職畳。その芸術体験は「いつか自分もひとの心を動かす畳を作りたい」という意識の原体験だと岩井さんは語る。

 11年3月11日、岩井畳商工店は震度5強の揺れに襲われ、自宅と共に全壊した。

 震災は店の存続を考える契機となった。「被災後は、高砂にある妻の実家で息子と共に畳屋を続けた。三年後に、以前と比べると半分の大きさの工場を再建した。」

 数十年前から徐々に出現した和紙畳など人工素材による畳の市場構造の変化,家屋の西洋化によるフローリング化が畳業界を落ち込ませている状況を現場で感じていたという。

 「売ってみたらどうですか?」仕事の合間なんとなしに作っていた額縁を見たお客さんの一言が岩井さんが小物を通して畳文化を発信するきっかけとなった。「素材や作り方に関わらず、畳を好きになってもらえたら嬉しい。今は畳の魅力を老若男女問わず多くの人に感じてもらいたい」

 毎月8日に同市若林区で開かれる「手づくり市」には岩井さんの“ワクワク”が生んだ畳小物が所狭しに並ぶ。

 時計を睨み、受注した仕事を抜かりなく行ってきた老舗の一角で、畳の新たなかたちを見つけた。

畳と折り紙を使ってコースターを作る岩井さん

河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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