玉虫塗に思いを乗せて 東北大・齋藤将志



 仙台の伝統工芸品、玉虫塗を作る東北工芸製作所は戦後、あのマッカーサーも足を運んだ老舗だ。昭和7年創業の東北工芸製作所は日本のものづくりの力を生かし、外貨獲得を目的とする国策の流れで設立された。玉虫塗は、赤や緑をベースに四季折々の花や「月とうさぎ」などを描いた宮城県伝統工芸品である。



「仙台をより多くの人に知ってもらいたい。玉虫塗はそのきっかけになって欲しい」。この強い思いで私たちに思いを語ってくれたのは、店長の佐浦みどりさん(44)だ。多くの伝統工芸品は、昔の生活に根付いた商品ではあるが、現代まで長年、残っている。つまり『使える』ということである。



ところが、今の多くの人にはなじみが薄い。そこで、新シリーズの「TOUCH CLASSIC」を作った。シンプルな形でモノトーンのデザインのグラス、サラダボールは、今までの玉虫塗とは少し違う。現代の洋風の建物、部屋にもマッチする。     

   

「そのままじゃいけないからね」。佐浦さんは玉虫塗が変わっていくことに全く抵抗がない様子だった。伝統工芸とは、昔ながらを重んじる工芸ではないのかもしれない。これまで培ってきた歴史、技法を守りつつも、革新を求めなければいけない。



伝統工芸のあり方をも変えようとしている。それは、『日常化』『大衆化』である。これまでの工芸品はお客様へのおもてなし、お祝いなどに多く使われていただろう。それを日常で多くの人が使えるようにするのである。工芸品はこれまでの技術、ノウハウがあるので容易には壊れない。長く使っているものは愛着が湧く。このようにまずは、玉虫塗を知り、そして宮城県に興味を持ち、好きになってくれたらいい。これが、佐浦さんの思いである。



日本は昔からものづくりの国として繁栄してきた。今は私たちが使っている多くのものの原点は、伝統工芸などの昔ながらの職人たちが培ってきた技術である。そしてそのすべてに多くの思いがつまっている。



 


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河北新報社 記者と駆けるインターン

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