日本の屋根 次世代へ 明治学院大3年 木村省吾

 薄暗い中で重厚な寺院の屋根瓦が黒光りする。

日本三景・松島にある寺院・円通院で毎年秋に行われる紅葉のライトアップ。

紅葉の鮮やかな紅と、瓦の艶めく黒の対比は圧巻だ。

寺院の建物を守り、景観を作り出す瓦。

施工したのは、仙台市青葉区にある屋根工事業「植木」だ。

「歴史のあるところには瓦があるんです」。

6代目の植木徹郎(うえき・てつろう)さん(36)は語る。


 2011年の東日本大震災では、発生当日から傷んだ屋根の修理に追われた。

1年間に請け負った修理や施工は約1000件に達した。

なんとか人材をかき集め、例年の3倍以上の仕事を受けたが、

それでも手が回らない。

400件は依頼を断らざるを得なかった。

「客の助け全てに応えることが出来なかった」と唇をかむ。


 震災報道の中で、割れた瓦の映像が繰り返し全国に流れた。

「瓦は地震に弱い」という従来のマイナスイメージに拍車がかかった。

震災以前から、瓦の需要は低落傾向にあった。

そこに震災の影響が加わり、瓦業者の廃業が相次いでいる。


 逆風を断ち切るべく、植木さんは震災後、

地元の同業者らと立ち上がった。

地元の高校生と一緒に鬼瓦を作る授業を積極的に開催し、

形として残る仕事のやりがいを伝える。

「若手の人材育成が最優先」と目標を一にする同志8人と、

瓦と若者をつなごうと意気込む。


 「これからマイホームを構えようという若い世代にもっと瓦を選んでほしい」。

願いを託すのは、オレンジやブルーなど、カラフルな粘土瓦だ。

色と形の組み合わせは60種以上に及ぶ。

30―40代の新築依頼者をメーンターゲットにし、

洋風建築にも合うようにと積極的に売り出す。

新しい取り組みは狙い通り。

若い世代からの関心を集め、注文は徐々に増えている。



【明るい色彩の洋風瓦を手に、瓦の魅力を説明する植木さん】


 


 瓦は1400年前に中国から伝わった。

以来、時代のニーズに合わせて形を変えつつ浸透し、

日本を代表する屋根材の地位を築いてきた。

「瓦の力を伝えることが大切なんです。

まずは若い人に伝える機会を作るために飛び回ります」。

厳しい状況の業界から生まれた若い力は、

瓦と次世代を結ぶ架け橋となる。


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。