子どもと木のおもちゃ 無限の可能性 司法修習生 照井国興
「こうやるんだよ」。帽子のおじさんが「桃太郎の昇り人形」に苦戦する男の子に優しく声をかけた。仙台市青葉区北山で「絵本と木のおもちゃ 横田や」を営む横田重俊さん(68)。男の子の手を握り手取り足取り。男の子が上手に糸を引き、桃太郎を昇らせると、「すごい。よくできたね!」。我がことのように喜んで見せると、男の子は誇らしげにはにかんだ。横田やの日常風景だ。
創業は1978年。妻の敬子さん(60)と2人で30年以上、絵本と木のおもちゃの魅力を地域に届けてきた。明治初期に建てられた店の扉を開くと木の優しい香り。右手には約1万冊の絵本の山。左側に目を向けると数えきれない木のおもちゃが空間を満たす。使用法が限られるおもちゃが市場に溢れる中、遊び方が無限に広がる物にこだわる。木の造形ブロック「KAPLA」は、組み合わせ次第で自由自在の形を作り出せる「魔法の板」だ。「遊び方が決まったおもちゃはつまらない。自由に遊びを作り出すことで子どもの創造力は無限に高まる」と木のおもちゃの魅力を語る。
店には子どもたちが木のおもちゃで自由に遊べるスペースが広がる。子どもに遊び場を提供し、子育てを応援したいという思いが込められている。親には子どもがのびのびと遊ぶ様子を見て、親子で一緒に遊べるおもちゃを選んでほしいと願う。
「子どもを育てる手伝いをしたい」。この38年、店が変わらず貫いてきた思いだ。2011年の東日本大震災では、被災地の多くの子どもたちが穏やかな暮らしを奪われた。夫婦は沿岸部の保育所、幼稚園に約7万冊の絵本を贈り、子どもたちが心の平穏を取り戻す一助になればと率先して動いた。
真夏の昼下がり、子ども時代に「横田や」に通ったという女の子が母親となって、我が子の手を引きやって来た。「私の思い出のおもちゃで娘も遊ばせたい」と、木のおもちゃを囲み、親子ではしゃぐ。それもまた、横田やの日常風景だ。
木のおもちゃでのびのびと遊ぶ男の子。それを見守る母親(右)と横田敬子さん(左)
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